請求した代金が入金されないとき、催促の前に確かめること
月末に入金明細と請求控えを突き合わせ、消し込めない行が3件残る。1件は先月も残っていた。相手は続いている取引先で、担当者の顔も浮かぶ。だから「お支払いの件ですが」の一文が書けずに、翌月へ送る。
未入金が長引く会社で足りていないのは、督促文の強さではありません。その請求がどこで止まっているかを、連絡する前に特定していないことです。止まっている場所が違えば、聞く相手も、聞く内容も変わります。
未入金を、四つの止まり方へ分ける
同じ「入金がない」でも、原因は自社側にあることが少なくありません。連絡の前に、手元の資料だけで次の四つを潰します。
| 止まっている場所 | 手元で確かめること | 確認できたときの動き |
|---|---|---|
| 請求書が届いていない | 送付先の部署名と宛先、送付日、電子化の有無、返送や不達の記録 | 送り直し。宛先が変わっていれば連絡先も更新する |
| 検収が終わっていない | 納品書の受領印、検収書、追加作業の合意、相手の担当者交代 | 検収に必要な書類を先に出す |
| 支払サイクルの範囲内 | 相手の締め日と支払日、当月締め翌月末などの条件、自社の請求締切に間に合ったか | 期日前なら連絡しない。次の入金予定日を控えるだけにする |
| 期日を過ぎている | 支払期日、経過日数、過去の同様の遅れ、金額 | 経緯を書面で残しながら連絡する |
この図で決めること上の三つは自社の資料で答えが出る。聞く相手が決まってから連絡する。
四つのうち上の三つは、相手に聞く前に自社の資料で答えが出ます。ここを飛ばして「ご確認ください」とだけ送ると、相手の経理は自社の記録を一から探し直すことになり、返答が遅れます。
照合カードを、請求一件ごとに埋める
未入金の一覧表に金額と経過日数だけを並べても、次の動きは決まりません。残った一件について、相手が社内で追える単位まで書きます。
未入金の照合カード 請求番号: 2026-0612。請求日6月30日、金額は6月納品分。 納品と検収: 6月12日納品、6月14日に現場責任者が受領印。検収書は未受領。 相手の支払条件: 当月末締め、翌月末払い。7月31日が支払期日。 自社の未確認: 5月の追加作業分を同じ請求書へ含めたが、追加分の発注書番号を書いていない。 起きている可能性: 追加作業分の発注番号が合わず、請求全体が保留になっている。 聞く相手: 発注を出した工事課の担当者。 連絡期限: 8月5日。
このカードの価値は「聞く相手」の行に出ます。金額の話だと思って経理へ電話すると、経理は発注側の確認待ちだと答え、そこで一往復増えます。止まっている工程が分かっていれば、最初から発注側へ聞けます。
最初の連絡で、支払いを迫らずに照合を頼む
期日を過ぎていても、一通目から支払いを迫る必要はありません。相手の担当者が社内で動けるよう、こちらの記録を先に開きます。
6月納品分のご請求(請求番号2026-0612)について、7月31日の期日でのご入金を確認できておらず、当社側の記載に不足がないか確かめたくご連絡しました。同じ請求書へ5月の追加作業分を含めておりますが、その分の発注書番号を記載しておりません。お手元の処理が止まっている場合、こちらから番号を分けた請求書を出し直します。8月5日までに、処理状況をお知らせいただけますか。
「お忙しいところ恐れ入りますが」で始めて要件が最後に来る文面は、転送されたときに読まれません。請求番号、期日、こちらの不備の可能性、相手にしてほしいこと、期限の順に置きます。
一方で、こちらに不備がないと確認できているのに謝り続けるのも、次の連絡を難しくします。四つの切り分けが終わっていれば、どこまでが自社の宿題かを言い切れます。
期日そのものを、取引条件として見直す
同じ相手で未入金が続くなら、請求を一件ずつ追う手を止めて、支払条件そのものを確認します。2026年1月1日に下請法の改正法が施行され、法律名が中小受託取引適正化法(通称「取適法」)へ変わりました。委託事業者には、支払期日を、検査をするかどうかを問わず物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定める義務があります。支払遅延や減額があった場合は、年率14.6%の遅延利息を支払うことも定められています。
この法律が自社の取引に当てはまるかどうかは、取引の内容(製造委託、修理委託、特定運送委託、情報成果物作成委託、役務提供委託)と、相手方と自社の資本金または従業員数の基準で決まります。改正では従業員基準(300人・100人)と特定運送委託が対象へ加わりました。当てはまるかどうかの判断や、実際に相談・申告するかどうかは、公正取引委員会と中小企業庁の資料を確認し、必要なら専門家へ相談してください。自社の取引が対象外でも、支払期日と検収の条件を書面で確認しておくこと自体は、次の請求の止まり方を減らします。
取引条件そのものを相談する段階に来ているなら、価格改定を相談する前に、取引先へ渡す材料で、価格だけでなく支払条件を協議の対象に含める作り方を確認できます。未入金の状態を担当者一人で抱えないためには、顧客管理表を複数人で共有する列と運用で、次回確認日を同じ行へ置きます。見積の段階から返事が止まりやすい相手なら、未決定事項から再連絡を作る方法も併せて見てください。
参考資料
今月の入金確認で消し込めなかった請求を、一件だけ選んでください。請求番号、納品と検収、相手の支払条件、自社の未確認を書き出したとき、「聞く相手」の行が経理以外になるなら、その一件はまだ督促する段階ではありません。