となりの成長室

協力会社への見積依頼で、比べられる見積が返ってくる出し方

3社へ同じ図面を送り、返ってきた金額が180万円、214万円、260万円。安い順に並べたところで、どこまでが同じ仕事なのかが分かりません。一番安い会社に「これで含まれていますよね」と電話をかけ、含まれていないと分かって、また待つ。

見積が比べられないのは、相手の書き方の問題ではありません。金額以外の条件を固定しないまま依頼したので、相手が自分の常識で範囲を決めて返しているだけです。依頼書の側を直すと、回収した時点で比較が終わります。

依頼書に、金額以外の条件欄を先に置く

建設業では、この「金額以外を提示する」ことが元請の義務として定められています。建設業法第20条第3項は、請負代金の額を除く契約内容を具体的に提示するよう求めており、国土交通省のガイドラインは「工事内容」について最低限明示すべき事項を挙げています。

提示する条件何を書くか抜けたときに起きること
名称案件名、対象の呼び方別案件の見積と混ざる
場所施工・作業場所、搬入経路移動と搬入の費用が後から出る
図面・数量設計図書、数量、版数古い版で拾われる
責任範囲どこからどこまでを相手が行うか境目の作業が誰の見積にも入らない
工程相手の作業期間と、全体の中の位置応援や残業の前提が各社バラバラになる
関係部位他業種との取り合い、特殊部分現場で止まってから追加を出される
作業条件環境、制約、時間帯、立入の制限夜間・休日の割増が後から乗る
費用負担材料の支給、安全対策、発生材の運搬と処分処分費の扱いが3社で違う

建設業以外でも、この8欄はそのまま使えます。加工品の外注なら「図面・数量」は材質と公差、「費用負担」は支給材と副資材の扱いになります。運送の委託なら「作業条件」は待機の想定時間、「関係部位」は前後の荷役担当です。ただし、義務として課されるのは建設工事の請負契約であって、他業種で同じ法的な位置付けになるわけではありません。使うのは項目の並びであって、法令の適用範囲ではありません。

図面を送る前に、条件を固定する外注見積の依頼から比較まで金額以外の条件、未確定の示し方、回答期間、前提の照合を順に置きます。
01条件提示範囲、工程、支給、費用負担を書く
02未確定の明示仮の前提と変わったときの出し方を指定
03回答期間提出の期日と様式を依頼時に決める
04前提の照合金額より先に条件欄の回答を並べる

この図で決めること金額差の多くは条件差。埋めてから比べると値下げ交渉が要らなくなる。

決まっていない項目こそ、依頼書に書く

条件が固まる前に見積を取りたい場面は普通にあります。そのとき空欄のまま送ると、相手はどこかで仮定を置き、その仮定を書かずに金額だけ返します。ガイドラインでも、具体的内容が確定していない事項については、その旨を明確に示さなければならないとされています。

未確定として明示する例 搬入経路: 現地確認前。台車搬入を前提に見積り、クレーン必要時は別途とする。 数量: 図面版数2で拾う。版数3で±10%の変動が見込まれるため、単価も併記する。 作業時間帯: 平日日中で見積り、夜間指定になった場合の割増率を欄外に記入する。 発生材: 当社引取りを前提とする。処分を含める場合は分けて記載する。

「未確定です、追って連絡します」で止めず、仮の前提と、前提が変わったときの出し方まで指定します。ここまで書くと、条件が変わっても再依頼まで戻らず、差額の確認で済みます。

回答期間を、依頼した日に決めて伝える

「できるだけ早くお願いします」は、相手が期日を決められず、結局こちらの都合の悪い日に届きます。建設業法施行令は、下請契約の予定価格に応じた見積期間を定めています。

予定価格設けなければならない期間
500万円未満1日以上
500万円以上5,000万円未満10日以上
5,000万円以上15日以上

これは契約内容の提示から契約締結までに置く期間で、やむを得ない事情があるときに限り、10日以上・15日以上の区分は5日以内で短縮できます。ガイドラインは「出来るだけ早く」といった曖昧な期間設定や、期間を設定しないまま見積らせることを違反例として挙げています。追加工事に伴う見積依頼でも同じ期間が必要です。

建設業以外なら日数の定めはありませんが、依頼書に「8月12日17時までに、下記の様式で」と書くだけで、催促の電話は減ります。相手が期日に間に合わないと言ってきたときに、どの条件を落とせば間に合うかを相談できるのも、期日を先に置いた場合だけです。

回収したら、金額より前に前提を並べる

見積が3社そろったら、合計金額の列を作る前に、依頼書の条件欄に対して各社が何と答えたかを並べます。

条件A社B社C社
責任範囲記載どおり既設撤去を除外記載どおり
発生材引取り前提処分費を含む記載なし
作業時間帯平日日中平日日中土曜含む
数量の前提版数2版数2版数1で拾っている
未回答なし搬入経路発生材、割増

この表を作ると、金額差の大半が条件差だと分かる回が出ます。安い会社へ値下げを求める前に、「記載なし」と「未回答」を埋めてもらいます。埋めた後で、同じ土俵に乗った金額を比べます。C社が版数1で拾っているなら、それは安いのではありません。別の仕事の見積です。

社内の技術担当へ条件を確認してから依頼を出す場合は、決めてほしいことを先頭に置く五行の形で問いを渡すと、回答が早く戻ります。自社が見積を依頼される側に回ったときの受付項目は見積依頼を受けたら、金額を出す前に聞くこと、仕入先ごとの価格条件や数量割引を継続して残すなら食材・資材の購買データを台帳へ変えるへつなげます。

参考資料

次に外注へ出す依頼を、送信前に止めてください。8欄のうち書けていない欄が3つ以上あるなら、返ってきた見積は比較表になりません。埋められない欄は空欄のまま送らず、仮の前提と変わったときの出し方を書いて送ります。

まずは相談から

見積依頼のひな形を、条件が揃う形へ作り替えませんか。

直近の依頼メールと返ってきた見積を数件お持ちください。抜けている条件欄と、比較表で先に並べる前提を一緒に洗い出します。