受けるか断るかを、社長の勘から線引きへ変える
引き合いの電話が入る。営業担当は「確認して折り返します」と答え、社長へ相談に来ます。社長は工程の空きと相手の顔を思い浮かべて判断する。判断そのものは速くても、折り返しは翌日になり、その間に相手は他社へ聞いています。
判断が社長に集まるのは、基準が言葉になっていないからです。基準を書けば、営業担当がその場で答えられる範囲が広がります。
判断の材料を、四つの軸へ分ける
「忙しいかどうか」だけで決めると、忙しさの感覚に左右されます。四つの軸に分けると、迷いの正体が見えます。
| 軸 | 見るもの | 判断への効き方 |
|---|---|---|
| 既存客への影響 | この仕事を入れたとき、既存の納期が動くか。動くなら何件 | 既存の納期が動くなら、受ける前に相談が要る |
| 粗利 | 同種品の実績原価と比べた見込み。特急対応や小ロットの割増を含む | 実績原価より低いなら、条件を変えずには受けない |
| 再現性 | 一度きりの特注か、続く仕事か。設備や治具が残るか | 続く仕事なら、初回の粗利が薄くても受ける判断がある |
| 断る影響 | その相手との既存取引、紹介元、同業への波及 | 紹介経由なら、断り方が次の紹介に影響する |
四つのうち、営業担当がその場で確認できるのは粗利と再現性です。既存客への影響は工程の空き情報が要り、断る影響は関係の履歴が要ります。この二つを共有しておくと、判断を任せられる範囲が広がります。
この図で決めること断る判断を全部持ち帰りにすると、断る返事が最も遅くなる。
線引き表を、三段階で書く
すべての引き合いを社長判断にせず、「即答してよい」「条件付きで即答」「持ち帰る」の三段階に分けます。
受注可否の線引き(2026年8月版) 即答して受ける: 標準品、数量300個以下、納期10営業日以上、既存客。営業担当の判断で受注可。 即答して条件を返す: 数量301〜800個、または納期6〜9営業日。分納か納期延長のどちらかを提示して受ける。単価は現行。 即答して断る: 図面のない依頼、材質指定なし、支払条件が未確定の新規、当社の設備範囲外(板厚6mm超)。 持ち帰る: 数量801個以上、納期5営業日以内、既存客の納期が動く案件、新規で継続の見込みがある案件。社長判断。回答は翌営業日午前まで。 見直しの時期: 四半期ごと、または工程の空き状況が2週間以上変わったとき。
「即答して断る」を明文化しておくのが要点です。断る判断を全部持ち帰りにすると、断るための回答が最も遅くなり、相手の印象が悪くなります。
持ち帰る案件は、判断に必要な情報を先に集める
社長判断へ回す案件は、情報が揃った状態で渡します。揃っていないと、社長が確認から始めることになります。
| 渡す情報 | 誰が集めるか |
|---|---|
| 数量、納期、仕様、支払条件、図面の有無 | 営業担当が相手から聞く |
| 該当週の工程の空き、動かせる案件 | 工程担当が当日中に出す |
| 同種品の実績原価と直近の見積単価 | 見積担当が過去実績から出す |
| その相手との取引履歴、紹介元 | 営業担当が顧客管理表から出す |
| 断った場合に想定される影響 | 営業担当が一文で書く |
この5点が揃っていれば、判断そのものは数分で済みます。持ち帰りが遅くなる原因の多くは、情報集めの側にあります。
断った案件も、記録して次の見積へ返す
断った引き合いは記録から消えがちです。同じ条件の依頼が続いているなら、設備や体制の判断材料になります。
- 断った理由を、条件(数量、納期、仕様、支払)で分類して残す
- 同じ理由で3件以上断ったら、その条件を受けられるようにする投資を検討する
- 断った相手から再度の引き合いが来たかを追う。来ないなら、断り方を見直す
見積の前に条件を揃えて聞く手順は見積依頼を受けたときに聞く項目、失注と断りを分けて記録する形は失注理由を次の提案へ戻す記録にあります。数字を会議で改善行動へ変える進め方は営業KPI会議から改善行動を決めるを併せて見てください。
直近1か月で判断に迷った引き合いを3件挙げてください。三つとも社長判断だったなら、そのうち即答できたはずの条件を書き出す段階です。