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提案が相手の社内で止まるとき、渡しておく材料

商談の手応えは悪くなかった。提案書も見積も出した。「社内で検討して連絡します」と言われて、そこから2週間、返事がない。催促するのも気が引けて、こちらから連絡できないまま月が変わる。

案件が止まった理由を、相手の興味不足だけで片付けない。話を聞いた担当者が社内で説明できる材料を持っていなければ、上司や他部署からの質問に答えられず、検討は止まります。確認が後回しになるうちに、案件は机の下へ入ります。

ここで扱うのは、提案の中身を良くする話ではなく、相手が社内で使う材料を渡す方法です。商談の場にいなかった人へ、こちらの提案がどう伝わるかを設計します。

提案を読むのは、商談にいなかった人

こちらが話した相手は、たいてい決める人の一部です。実際には、上司、経理、現場、場合によっては別部署が資料を読みます。その人たちは、商談での会話を知りません。

商談で伝えた話のうち、相手が社内で再現できるのはごく一部です。担当者が持ち帰れなかった情報は、その時点で消えます。中小機構のJ-Net21も、商談資料は特定の買い手に向けて購入の意思決定に導くためのものであり、パンフレットとは違うと説明しています。

つまり、提案資料は自社を紹介するためではなく、担当者が社内で使うために作ります。

相手の社内で必ず聞かれる6つ

聞かれること資料に入れる内容抜けているとどうなるか
何のためにやるのか相手が困っている状態と、それがどう変わるか「あったらいいね」で終わる
なぜ今なのか先送りした場合に起きること、時期の制約来期送りになる
なぜこの会社なのか対応範囲、進め方、他の選択肢との違い相見積の比較で埋もれる
いくらで、いつまでか費用の内訳、期間、追加費用が出る条件経理で止まる
うまくいかなかったらどうなるか想定される問題と、そのときの対応慎重な人が反対する
誰が何をするのか自社の作業範囲と、相手側で必要な作業・体制現場から「手が回らない」と反対される

このうち、こちらが提案書に書きがちなのは1と3、書き漏らしやすいのは2と5と6です。とくに「相手側で必要な作業」を書いていない提案は、現場の反対で止まります。

提案書とは別に、1枚を渡す

分厚い提案書は、社内では回覧されません。担当者がそのまま会議に出せるA4の1枚を、提案書とセットで渡します。

1枚に入れる項目書き方
現状相手から聞いた言葉で、今起きていることを2〜3行
やること提供する範囲を箇条書きで3〜5点
やらないこと今回の範囲外を明記する
期間開始からの流れと、区切りの時期
費用総額と内訳。追加費用が出る条件
相手側で必要なこと確認、立ち会い、データ提供、社内調整の想定
次に決めること相手が次に何を決めれば進むか

「やらないこと」を書くと、頼りなく見えると思うかもしれません。実際には逆で、範囲が明確な提案の方が、社内では通しやすくなります。後から出る追加費用の話も減ります。

資料そのものの作り方を先に整えたい場合は、営業資料を作る前に、まず決めることにまとめています。実績を見せる部分で顧客名が出せない場合は、顧客名を出せない実績を、営業で使うにはの整理が使えます。

比較の軸は、こちらから出す

相見積になっている場合、相手は必ず比較します。比較の軸を相手任せにすると、金額だけで並べられます。

  • 対応する範囲(どこからどこまでか)
  • 進め方(誰が、どの頻度で、どう確認するか)
  • 納期と、変更が出たときの扱い
  • 費用に含まれるもの、含まれないもの
  • 終わった後の対応

この5つを表にして渡すと、相手は自社の欄を埋めながら他社を比べます。ここで他社の欠点を書いたり、自社が優れていると断定したりする必要はありません。軸を示すだけで、金額以外の話が会議に残ります。

J-Net21のビジネスQ&Aでも、商談資料の標準的な項目として、ニーズ提案、解決できる理由、エビデンス、競合比較、注文後フロー、FAQが挙げられています。注文後の流れと、想定される質問への答えを先に入れておく形です。

進め方と、注文後の流れを先に見せる

「発注したら、次に何が起きるのか」が見えないと、決める側は不安になります。契約から納品までの流れを、日数の目安つきで並べます。

段階自社がやること相手にお願いすること目安
発注後着手日と担当の連絡窓口と社内の確認先を決める数日
準備現状の確認、必要な情報の整理資料・データの提供、現地確認の日程1〜2週間
実施作業、進捗の共有途中確認、判断案件による
引き渡し納品、説明、残った課題の共有受け取り確認数日

この表は、社内で「担当をつけないと回らないのでは」と心配している人に効きます。相手側の作業量が見えると、判断が進みます。

次の連絡のきっかけを、その場で決める

「検討して連絡します」で終わらせないために、商談の最後に次の日程を置きます。

  • 社内で共有するのはいつか
  • その場に誰が出るか
  • こちらが用意する追加資料はあるか
  • 何日ごろにこちらから連絡してよいか

ここまで決めておくと、次の連絡は催促ではなく約束になります。決めずに終わってしまった案件は、見積後の再連絡が止まるとき、まず見ることの手順で再連絡の理由を作ります。提案前の前提確認が足りていないと感じる場合は、見積依頼が来たあと、提案前に聞いておきたいことへ戻ります。

止まった案件から学ぶ

社内検討で止まった案件は、次の提案の材料になります。止まった理由を「予算がなかった」で終わらせず、どの質問に答えられなかったのかまで残します。記録の残し方は、失注理由を、次の営業に使える記録にするにはにまとめています。

同じ質問で3回止まっているなら、それは提案資料に足りない項目です。個別対応ではなく、標準の1枚へ反映します。

よくある失敗

提案書を厚くする

ページを足すほど、社内では読まれなくなります。詳細は別紙にして、回覧される1枚を分けます。

担当者の熱意に任せる

「先方の担当者が乗り気だから大丈夫」は、社内の反対が見えていないだけのことがあります。反対しそうな立場の人が何を気にするかを、担当者へ聞きます。

値引きで動かそうとする

止まっている理由が説明材料の不足なら、値引きしても同じ場所で止まります。先に、答えられていない質問を探します。

催促だけを繰り返す

「その後いかがでしょうか」を3回送るより、社内会議で使える資料を1つ足す方が動きます。

よくある質問

決める人に会わせてもらえません

会えないことを前提に、担当者が説明できる材料を渡します。あわせて「社内で共有されるとき、どんな質問が出そうですか」と聞くと、足りない項目が分かります。

予算がないと言われました

時期の問題か、金額の問題か、優先順位の問題かを分けます。次の予算編成の時期を聞ければ、連絡する時期が決まります。

相手の社内事情を聞くのは失礼ではないですか

「決裁はどなたですか」と直接聞くより、「社内で共有されるとき、どんな点を確認されそうですか」と聞く方が答えやすくなります。相手を助ける質問として聞きます。

1枚に収まりません

やらないことと、相手側で必要なことを先に残し、詳細は別紙へ回します。全部載せた1枚は、1枚である意味がなくなります。

まず1件、止まっている案件から

今日から始めるなら、いま止まっている案件を1件選びます。6つの質問に自分で答えてみて、資料に書いていないものを数えます。書けていない項目が、相手の社内で答えられていない質問です。

参考資料

提案は出しているのに社内検討で止まる案件が続いているなら、止まっている1件から、渡す1枚の項目、比較の軸、次の連絡の決め方を一緒に整理できます。

まずは相談から

営業の次の一手を、一緒に決めませんか。

資料が全部そろっていなくても大丈夫です。いま手元にあるものから話せます。今月動かせる相手と、送る言葉まで、一緒に決めましょう。