代理店同行の前後で、メーカー営業が決めておくこと
販売店から「来週のお客様訪問に同行してください」と連絡が来る。メーカー営業は製品資料を用意し、当日は機能を一通り説明する。帰り道で販売店へ「感触はどうでしたか」と聞くが、顧客が何を決められず、誰が次に動くかは残っていません。
同行者が増えるだけでは、顧客の判断材料は増えません。販売店が知る取引の経緯、メーカーが答える技術条件、顧客本人が抱える仕事上の制約を、訪問前に三者の役割へ分けます。
前日の十五分で、訪問の終了条件を一つ決める
「製品を紹介する」は訪問目的として広すぎます。訪問後に三者が何を持ち帰れば前へ進めるかまで決めます。
| 確認すること | 販売店へ聞く問い |
|---|---|
| 顧客が相談した場面 | どの仕事で、いつ困ったと聞いているか |
| これまでの説明 | 価格、仕様、納期のどこまで話したか |
| 今回決めたいこと | 現地確認、比較条件、見積範囲のどれか |
| 触れないこと | 未確認の金額、納期、他社情報は何か |
| 訪問後の担当 | 顧客へ誰が、何を、いつ返すか |
販売店の見立てと顧客本人の言葉は分けます。「更新を希望している」と聞いていても、顧客へは修理、継続使用、更新のどれを比較したいかを確かめます。
この図で決めること同行の終了条件と訪問後の担当を、訪問前に同じカードへ置く。
三者役割カードの完成形
訪問資料の表紙か、社内だけで見るメモへ次のカードを置きます。
訪問の終了条件 顧客が比較したい二案と、現地で追加確認する条件が決まる。
販売店 取引経緯、現在使っている製品、今回の相談が始まった理由を説明する。
メーカー 使用条件を三点確認し、選択肢ごとの技術上の前提を答える。価格と納期は確認後に返す。
顧客へ聞くこと 止められる時間、使用頻度、現在最も困る場面。
訪問後 メーカーが翌日正午までに技術条件を販売店へ返す。販売店が顧客へ見積日を連絡する。
このカードがあれば、メーカーが最初から最後まで話し続ける必要はありません。販売店が経緯を説明し、顧客が現在の仕事を話し、メーカーが技術条件を確かめる。発言の順番も役割の一部です。
当日は、答えられない条件を持ち帰る
同行訪問で避けたいのは、沈黙を埋めるために未確認の納期や可否を答えることです。その場で答えられない条件は、次の形で受け取ります。
| 持ち帰る項目 | その場で返す内容 |
|---|---|
| 技術可否 | 確認する仕様と回答者 |
| 現地条件 | 必要な写真、寸法、停止条件 |
| 価格 | 見積へ含む範囲と未確定事項 |
| 納期 | 在庫、製作、工事枠の確認日 |
顧客の前で販売店とメーカーの見解が違ったときも、どちらかへ即座に合わせません。「確認する条件」「誰が確認するか」「いつ返すか」を三者へ同じ言葉で返します。
訪問後は、顧客への約束と代理店への報告を分ける
訪問メモを販売店へ戻す際は、顧客と合意した約束、メーカーの宿題、販売店の宿題を分けます。顧客から直接聞いた社内事情や個人情報を、目的や合意を確認せず広く共有しません。代理店契約、顧客との関係、情報の利用目的に沿って共有範囲を決めます。
訪問前の現場確認項目は技術営業が持ち帰る位置・運用・制約・未確認で作れます。代理店から最初の相談を受けた段階なら紹介元・相談相手・社内担当の受け渡しへ戻ります。新しい紹介を依頼する前の準備は紹介元が転送しやすい三者の整理で、同行依頼と紹介依頼を混ぜません。
J-Net21は、ユーザーの声を集める方法として、販売先の営業への同行や購入者への訪問を挙げています。同行の価値は説明員を増やすことだけにありません。流通側が知る経緯と、利用者が話す使用場面を、メーカーの技術確認へつなげられる点にあります。
参考資料
次の同行予定を一件開き、「訪問の終了条件」を一文で書きます。販売店、メーカー、顧客の役割と、訪問後に返す担当・期限を続けて書ければ、資料選びはその後で十分です。