繁忙期の人繰りを、前月のうちに決める
毎年、同じ月に受注が集中する。今年もそうなると分かっているのに、割り振りを決めるのは前日の夕方か当日の朝です。誰かが休むと連鎖して予定が崩れ、社長が現場へ入って穴を埋める。繁忙期が終わると、疲労だけが残って記録は残りません。
当日の判断が重いのは、決める材料が当日に揃うからです。前月のうちに枠を決めておけば、当日は数を数えるだけになります。
前月に決めるのは、四つの枠
人繰りの計画で必要なのは、詳細な日別表ではありません。上限と下限の枠です。
| 枠 | 前月に決めること | 決めておかないと起きること |
|---|---|---|
| 自社の稼働枠 | 通常勤務で流せる量、残業を含めた上限、連続して残業できる日数 | 上限のない残業前提の計画になり、月末に人が倒れる |
| 休みの枠 | 有給や交代の希望日、動かせない予定、最低限残す要員 | 当日に休みが判明し、代わりを探す時間が工程を削る |
| 外注の枠 | 応援を頼める先、その先の空き、依頼の締切日、単価 | 直前依頼で単価が上がり、断られる確率も上がる |
| 断る枠 | どの条件なら受けないか。納期、数量、新規かどうか | 受けてから調整することになり、既存客の納期が動く |
四つ目の「断る枠」を先に決めておくのが要点です。忙しくなってから断る判断をすると、断る理由が「今は無理」だけになり、次の引き合いも来なくなります。
この図で決めること断る条件を先に書かないと、断る理由が「今は無理」だけになる。
過去2年の同じ月を、実績で見る
計画の前提に置くのは、感覚の「今年は忙しそう」よりも、過去の同じ月の実績です。見るのは3つの数字だけで足ります。
繁忙期の前提(対象: 2026年9月) 2024年9月: 受注28件、うち9月中の納品22件。残業合計142時間。外注へ出したのは3件。 2025年9月: 受注31件、うち9月中の納品26件。残業合計168時間。外注へ出したのは5件。断った引き合い2件。 今年の見込み: 既に受注済み12件、引き合い中9件。8月中の受注確定分で9月納品は15件前後。 自社の稼働枠: 通常で月20件。残業を月120時間まで使って24件。 差: 見込み26件に対し、自社枠24件。2件分は外注か納期調整。 休みの枠: 9月の連休で2名が3日ずつ不在。実質の稼働は22件相当。 結論: 4件分が枠外。外注枠を9月5日までに2件確保し、残り2件は納期を10月上旬へ寄せる交渉をする。
この計算をしておくと、9月に入ってから来る引き合いへ即答できます。「4件分が枠外」と分かっていれば、新規の引き合いを断るか、既存客の納期を先に相談するかを、その場で選べます。
断る判断は、相手で選ばずに条件で書く
繁忙期に断るのは、相手との関係を切ることではありません。次につながる形で条件を返します。
ご相談いただいた件、9月中旬の納品というご希望に対して、現在の生産枠が埋まっており、そのままではお受けできません。二つの形でしたらお受けできます。一つは、納品を10月8日以降にしていただく形です。もう一つは、数量を半分にして9月18日に第一便、残りを10月8日にする分納です。どちらも仕様と単価は現行のままです。9月8日までにご希望をお聞かせいただければ、その週の生産計画へ組み込みます。
「今は手一杯です」で終わると、相手は他社へ行き、戻ってきません。納期か数量のどちらかを動かす二択にすると、相手の社内でも検討できます。
繁忙期が終わった週に、記録を残す
翌年の計画は、終わった直後の記憶からしか作れません。落ち着いてからでは、細部が消えます。
- 実際の残業時間と、どの工程で増えたか
- 外注へ出した件数と、依頼が間に合わなかった件
- 断った引き合いと、その後その相手から連絡が来たか
- 当日に判断が詰まった場面と、そのとき欠けていた情報
当日の手配が一人に集中している状態を先に外すなら配車と当日手配の属人化を外す、人を増やす前に任せる範囲を切り出すなら採用する仕事の棚卸しを見てください。外注枠を早めに押さえる依頼の作り方は協力会社への見積依頼で渡す条件にあります。
次に来る繁忙期の月を一つ選んでください。過去2年の同じ月の受注件数と残業時間を並べたとき、今年の見込みが自社の稼働枠を超えるなら、当月へ入る前に断る条件を書く段階です。