配車と当日の手配が一人に集中するとき、残すのは変更の記録
配車担当が休んだ日に、代わりに座った人が最初に困るのは配車表の読み方ではありません。「この荷主は前日夕方に数量が変わることが多いから、午後の便を空けてある」といった、表に書かれていない前提です。だから朝は回っても、10時に一本電話が入った瞬間に止まります。
配車を引き継げるようにするとき、配車表を共有フォルダへ置くところから始める会社は多いのですが、それだけでは代われません。表に載っているのは結果です。代わりの人が必要なのは、予定をどう変えたか、そのとき誰に連絡したかのほうです。
朝の割り当てより、当日に動いた分を書く
配車が属人化しているかどうかは、次の質問で分かります。「先週の水曜、予定と違う動きをした便は何件で、それぞれ誰の判断でしたか」。答えが担当者の記憶からしか出てこないなら、引き継ぎの材料は残っていません。
この図で決めること変更の理由と連絡先が残る日から、休める配車になる。
貨物自動車運送事業では、この「予定と違う動き」を記録する考え方が制度の側にあります。国土交通省の解釈通達では、運行指示書と異なる運行を行う場合、原則として運行管理者が新たに運行指示書を作成して指示し、その内容を運転者等が業務の記録へ記録することとされています。運行指示書は運行中は運転者が携行し、営業所に写しを備え置き、運行終了後は営業所で保存します。
安全のための仕組みですが、引き継ぎの材料としても同じ形が使えます。変更が起きた事実、誰が判断したか、どこに残ったかが一組になっているからです。運送業以外でも、工事や設備の当日手配で同じ欄を作れます。
当日変更の記録欄を、六行にする
配車表の余白に「変更」とだけ書いても、翌日には意味が読めません。変更一件につき、次の六行を埋めます。
当日変更の記録 変更前: 8月3日 9時、2t車1台で東部ルート4件。 変更後: 4件目を14時へ後ろ倒し、3t車へ振り替え。 変えた理由: 3件目の納品先で数量が2倍に増え、積み切れないと現場から連絡。 連絡した先: 4件目の荷受担当へ11時05分に電話、14時着で了承。運転者へは無線で指示。 費用と時間: 3件目で待機45分。荷主側の指示による待機。 戻し先: 数量変更は毎月末に発生している。翌月分は前日確認の対象に追加する。
六行目の「戻し先」が、この記録を引き継ぎ資料に変えます。当日の対処だけを書くと、記録は毎日増えるのに来月も同じことが起きます。繰り返している変更を月に一度拾い、前日確認や契約条件の側へ返します。
待ち時間を、担当者の調整力から切り離す
配車担当が一人で抱えがちなもう一つが、待機です。現場で待たされた分を担当者が黙って翌日の組み方で吸収していると、待機が起きている事実そのものが会社に残りません。
貨物自動車運送事業の業務の記録では、集貨地点等での待機時間について、30分未満なら記録を省略して差し支えないとされています。裏返すと、30分以上の待機は記録の対象です。通達は「荷主の都合」を、事業者の運行計画や運行指示によらない荷主の指示等によるものと定義し、事業者の都合で生じた待機時間はこれに含まないと分けています。この区別を記録の時点で付けておくと、荷主との条件協議で使えます。
経済産業省・農林水産省・国土交通省がまとめたガイドラインでは、1運行あたりの荷待ち・荷役作業等にかかる時間が計約3時間となっていることを踏まえ、1時間以上短縮して2時間以内とすることを目標とし、達成した場合はさらに1時間以内を目指すことが示されています。自社の待機が何分かを記録していなければ、この話に乗ることも、条件の相談を切り出すこともできません。
なお、点呼、業務の記録、運行指示書の作成と保存は、事業の区分ごとに求められる内容が異なります。自社に何が義務として課されているかは、通達と所管の運輸支局の案内で確認してください。ここで扱っているのは、義務として残す記録を引き継ぎにも使うという運用の話です。
一週間だけ、二人で同じ欄を書く
記録欄を作っても、担当者一人が書き続ける限り引き継ぎにはなりません。一週間、配車担当と別の一人が同じ六行を書き、金曜に突き合わせます。別の人が「変えた理由」を書けなかった件が、引き継ぎで最初に潰す穴です。
社長や特定の一人へ仕事が集まる構造そのものを動かすなら、社長依存の仕事を、どこから引き継ぐかで進める条件と戻す条件の分け方を確認できます。受注から在庫確認、出荷指示までを同じ行で渡す形は工場営業事務の受注・出荷・在庫確認、工程が変わったときに関係者へ届ける順番は工事工程変更の関係者共有が近い形です。
参考資料
今日の配車で、朝の予定から変えた便を一つ選んでください。変更前、変更後、理由、連絡先、待機、戻し先の六行を書いてみて、「連絡した先」が書けないなら、その連絡はまだ担当者の頭の中だけにあります。