仕入や輸入が遅れそうなとき、顧客へ先に伝えること
仕入先から「本船が遅れていて、今のところ2週間ほど後ろになりそうです」と電話が入る。営業はその日のうちに顧客へ「入荷が遅れる見込みです。分かり次第ご連絡します」とメールを送る。誠実に見える対応ですが、翌日から先方の担当者は毎朝「その後どうですか」と聞いてきます。
理由は簡単で、相手はその内容で社内へ説明できないからです。「遅れる見込み」だけを持って生産計画の会議に出れば、何日ずれるのか、確定なのか、いつ分かるのかを必ず聞かれます。答えられなければ、担当者はこちらへ電話するしかありません。確認の電話が続くのは、相手がしつこいからではありません。こちらの一通目が足りていない合図です。
遅延連絡を、三つの層に分けて書く
一通目で必要なのは、謝罪の言葉数より、相手が持ち帰れる三つの層です。
| 層 | 書くこと | 相手がこれで決められること |
|---|---|---|
| 確定 | いま動かない事実。出港日、通関の状況、確保できている数量、代替品の有無 | 今日決めてよい範囲 |
| 未確定と根拠 | 何が未確定か、なぜそう見込むのか、誰の情報か | 社内へ説明する材料 |
| 次回連絡 | 次にいつ、何が分かった状態で連絡するか | 待つか、別手段を動かすか |
この図で決めること次回連絡の時刻を置いた瞬間から、確認の電話は止まる。
三つ目が抜けている連絡が一番多く、そして一番確認の電話を呼びます。「分かり次第」を「8月7日15時までに、通関の見通しをお伝えします」へ書き換えるだけで、相手はその時刻まで自社の中で待てます。
伝聞のままにせず、根拠の出どころを書く
「遅れそう」という情報をどう裏づけるかは、実は公的なガイドラインが踏み込んでいます。建設業法第20条の2は、工期や請負代金の額に影響を及ぼす事象が発生するおそれがあると認めるとき、契約を締結するまでに相手方へ通知することを求めています。下請側から通知する事象の例として、主要な資機材の供給不足や遅延、価格の高騰、労務の供給不足が挙げられています。
注目したいのは、通知に添える「根拠情報」の扱いです。国土交通省のガイドラインは、根拠情報として、メディア記事、資材業者の記者発表、公的主体や業界団体が作成・更新した一定の客観性を有する統計資料、過去の同種工事の見積書などに裏付けられた情報を用いる必要があるとし、一の資材業者の口頭のみによる情報は根拠情報から除かれるとしています。そのうえで、通知する際は資機材の種類、価格の基準日、情報源を明示することが必要だとしています。
これは建設工事の請負契約についてのルールで、他の業種に同じ義務があるわけではありません。ただ、「口頭で聞いた話だけでは相手が確かめられない」という考え方は、輸入品でも部品でも同じです。仕入先からの電話を受けたら、そのまま転送する前に一つ聞きます。「その見込みは、船会社の案内やスケジュール表など、こちらから顧客へ示せる形で出せますか」。出せるなら添える。出せないなら、伝聞であることを書いたうえで、いつ確定情報になるかを聞きます。
顧客へ出す前に、社内で埋める確認欄
営業が一人で文面を考え始めると、社内でしか分からない情報が抜けます。連絡の前に、受発注、購買、出荷で次を埋めます。
遅延連絡の社内確認欄 対象: 受注番号2026-0781、A部品300個。当初納期8月20日。 確定している事実: 本船は7月30日に出港済み。到着港は変更なし。300個のうち120個は国内在庫あり。 未確定: 通関の完了日。現時点の見込みは9月3日前後。 根拠: 船会社のスケジュール改訂通知(8月1日付、フォワーダー経由で書面あり)。顧客へ転送可否を確認済み。 打てる手: 120個を8月20日に先行出荷し、残りを分納。分納の追加送料は当社負担。 相手の使い方: 先方は9月10日の量産開始に使う。120個で試作は回る見込み。 次回連絡: 8月7日15時、通関見通しの再確認後。
この欄の「相手の使い方」を書けるかどうかで、提案の質が変わります。何に使う部品か分かっていれば、全量がそろうまで待たせず、先に必要な分だけ出す案が作れます。分からないなら、それも一通目で聞きます。
遅れの影響を、相手へ一方的に押し付けない
自社が発注する側に回ることもあります。仕入先の遅れを埋めるために、別の外注先へ短い納期で押し込むと、今度はそちらへしわ寄せが出ます。中小企業庁は、発注企業と受注企業の間で適正な取引が行われるよう、望ましい取引事例と問題となり得る取引事例を業種別のガイドラインで示しています。短納期での発注や、発注内容の頻繁な変更は、そこで扱われている論点です。
急ぎの手配を頼むときは、いつまでに何が必要かに加えて、なぜ急いでいるか、どこまでなら条件を緩められるかを一緒に渡します。増えた費用や作業を相手が黙って被る形にしないことが、次に本当に困ったときの融通につながります。
初報の型そのものを揃えたいなら問い合わせへの初回返信で、何をいつまでに伝えるか、電話で受けた注文の条件を後工程へ渡す形は電話注文の受注メモが使えます。相手が社内で稟議や説明に使う一枚が必要な段階なら、判断・根拠・条件・未確定を置く一枚へ材料を移します。
参考資料
いま遅れが見えている案件を一件開いてください。確定、未確定と根拠、次回連絡の三層に分けたとき、根拠の行が「仕入先からの電話」だけなら、顧客へ送る前にもう一往復、書面で出せる形を仕入先へ頼む番です。